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アル・バハール・タワーズのコンセプトは、「イスラムの伝統建築」に加え、「サステイナブルな技術」と「バイオミミクリー的推論」という3点を統合する、というものだ。バイオミミクリーとは生物模倣のことを言い、生物の形態や機能をヒントに科学技術などに応用する手法。ミツバチの巣の構造を模したハニカム構造が有名である。

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①イスラムの伝統建築

中東の建築では、「マシュラビーヤ」と呼ばれる、格子で仕切られた窓、特に女性の住む領域を仕切るスクリーンがつくられる。外装のスクリーンは、この伝統的な要素の意匠的な面と、特に機能的な面を残して環境対策へと昇華させたものだ。

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スクリーンは、1棟あたり約1000個のパーツから成っている。コンピューター制御された個々のパーツが、太陽の動きに合わせて傘のように開閉する。

②サステイナブルな技術

近年、UAEは省エネを推進するようになっている。砂漠気候で夏の日中は平均して気温40度以上、雨はほとんど降らないが海に面しているため湿度も100%近くなるアブダビで環境配慮型の建築をつくろうとすると、ビルを直射日光から守る方法を探ることが不可欠となる。固定式のスクリーンを設置してしまうと、建物内部から外部の景観を損なうことになる。日射対策として、この地域では熱線吸収ガラスか熱線反射ガラスがしばしば使われるが、そうなると日中でも照明を点けることが多くなり、環境に配慮しているとは言い難い。

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このように、イスラムの伝統建築の要素を取り入れつつ、環境性能に関しては、米国のLEED基準をベースに決めた。結果として、建物全体のCO2排出量を同規模の建物に比較して40%削減することが可能となった。

③バイオミミクリー的推論

上述の通り、日射を遮るためには隙間なくスクリーンで覆われ、視線を確保する際には逆になるべく開口が広い方が良い。様々な検討を重ねる中で、外装スクリーンのレイアウトは、自然の形態であるハニカムを採用すると、条件を満たし、同じパターンで外皮を覆うことができるとわかった。スクリーンの開閉の様子は呼吸のようで建築が意思を持ったように見える。が、それ以上にアル・バハール・タワーズの外観が、昆虫の巣か植物の趣を持つのは、このハニカムパターンによるところが大きいようだ。

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